忘れて去った彼女

部屋を掃除していると、彼女の忘れ物を発見、手が止まってしまう。三省製薬デルメッドと書かれた、化粧品と思われる小さなチューブ。

どんな時でも肌が綺麗で、スッピンでも違和感ない女性だった。考えないようにしていたけど、一気に色んな事が思い出され、さっきの喧嘩を後悔中。

いつも自分ばかり謝るから、今回ばかりは絶対譲らないと決意は固い。三省製薬デルメッドはポイしようかと一瞬迷ったが、それを行動に移せば本当に終わり。

戻りたい気持ちはあるよ。あんなに啖呵を切っちゃった手前、プライドが邪魔で中々電話をかける勇気が出ない。

次の瞬間、「もしかしたら、わざと三省製薬デルメッドを忘れてった?」と、都合の良い考えが浮かんだけど、そんなに世の中上手くいかない事は、十分承知済み。

あいつを離したら、絶対後悔する。だからやっぱり、こっちが謝罪するしか方法無しかも。

そう考え立ち上がり、三省製薬デルメッドを握り締めて家を飛び出す。簡単に引き下がる俺。